森田剛主演いのうえ歌舞伎☆號『IZO』(1/13公演)ネタバレ含む感想

日曜に観て来ました『IZO』(感想書くのに凄い手こずった)。席が近かったお陰で表情は良く見えたけど、左側の花道をよく使っていたのでそっちはちょっと見辛かった。あと森田さん小さいから前の人の頭でよく隠れて見えなかった箇所有り。そして舞台セットの転換技術が凄かった。あれはもうちょっと引きで観たいです。大阪公演は好むも好まざるも後ろの席なので今度はしっかり全体を見たいです。

以下内容に触れた感想。


取り敢えず森田さんの良かったところから。もさもさ頭からこざっぱりポニーにエンジの着物で見違えて綺麗になったところ、「同じ四文字じゃないか」でえぐえぐ泣いてるとこがかわいかった。背筋を伸ばしてカッと遠くを見据えるシーンの眼光とか、小さい背丈に似合わぬ存在感とか、アイドルらしからぬ野性味溢れる風貌とかも良かった。
心にぐっと来たシーンは、兄弟の契り話を蚊帳の外で見せられる所、おミツと祝言ごっこをする所、天と慕った武市も自分と同じ犬だったのかもしれないと知るシーン、最後自分の言葉で初めて心境を語るシーンなど。
森田さんの声が少し潰れていたのを見て上演の長さと出番の多さを痛感しました。潰れていたけど掠れはしてませんでした。『荒神』のとき出番も叫びもそこそこあって潰れなかった事を考えるとやっぱり喉は強いんだと思います。あと頬が痩けてました。誰か森田さんに栄養の高いもの与えてくださーい。
武市先生役の田辺さんは線が細いイメージだったけど、声を太くして貫禄を出していたのが凄かったです。それこそ『荒神』から2年しか経ってない訳で、老けたとかじゃなくて演技で野太さを出してるのが凄いなと。
素敵ハゲ(スキンヘッド)こと山内さんはハゲじゃなくカツラ被ってました(当たり前ですが)。美形っぷりが凄かった。森田さんとの絡みが結構あってドキドキした。面白シーンが少なかったのが残念だったけど「うわくっさ…」のとこで笑った。隙あらば笑いを入れる事が出来るのが凄い。最初から最後まで素敵な人でした。
おミツ役の戸田恵梨香ちゃんは最初に登場したときどうかなと思ったけど舞台が京都に移ってからが凄く良かった。台詞も聞き取り易かったし。お見合い相手のダメさ加減にやさぐれてるとこが面白かった。アンコールで見せてくれた笑顔が可愛らしかった。
坂本龍馬役の池田鉄洋さんはオイシイ役だったなー。全編通して面白かったもの。重い内容の中、唯一の癒し系でした。ご飯を食べるシーンで勢いよく茶碗を持ったらたくあん(?)がポロリと床に落ちちゃったんだけど、幕が降りる直前にひょいと拾ってニコニコしながら食べてたのが面白かった。落っこちたとき『あ…』て思ったんだけどまさか拾って食べるとは…!落ちたもの食べちゃったヨ!という衝撃のもと大ウケ。あとは空気を読まずに登場する所と膝をついたまま坂をツルーと滑ってる所など。
西岡徳馬さんは立ち姿がカッコ良かった。大きく両足を開いてドッシリとした風格が凄かった。アンコールでは森田さんを前に出る様勧める姿が優しくて嬉しかった。粟根さんの勝海舟もハマってました。ちょっとコミカルなのにちゃんとインテリな感じとか。声も心地良くて安心して見ていられます。
パンフレットでは森田さんへのメッセージが橋本じゅんさんからでした。凄い褒めてくださってて…あざーす!しかし新年の挨拶を森田さんがわざわざ電話をしていたのには驚きました。マジでか!?えらい懐いてるじゃないですか。橋本さんのこと本当に好きなんだねえ。橋本さんは橋本さんでカウコンをリアルタイムに見てくださったりしてて。たまにこういうプライベートでの常識人っぷりを聞くとビックリする(案外ちゃんとした人だとは思ってるけど)。


さてと。一通り褒めたところで…こっからが肝心の内容の感想です。以下ちょっと楽しくない感想(ご注意を)。


内容ですがなかなか厳しいものがありました。どこがって以蔵に共感も同情も出来なかったってのが。ハッキリ言っちゃうと以蔵の結末って以蔵の身から出た錆としか言い様が無いんですよ。だからまーそらしょうがねえわって感じで。『馬鹿なこと』がこれほど罪に感じる人もそういない。
そんな訳で一番共感出来たのは武市先生でした。部下じゃないけど後輩を持つ身としては、本当に以蔵使えないっていうか、言葉悪いけど邪魔っていうか。頭が悪い事に対して何の努力もしないので同情のしようがありません。主人公なのに何でこんなに性格ダメ過ぎなんだろう…。Wikipediaとかで岡田以蔵の項目を見るとそこまで馬鹿じゃないと思うんですけど。以蔵の性格付けがこうなったのは森田さんのパブリックイメージのせいなんですかね(何か悲しい…)。
しかし周りの人間も何でそんなに以蔵に構うんだろ。かわいいから?見た目の小動物的かわいさで救われてるけど、これがもっさりした男だったら……私だったらキレてるよ。そう考えると以蔵って結構皆に愛されてると思うんだけど。それだけじゃダメなのか(欲張りだなあ)。本人的には全然足りてなかったようですが。森田さんが今まで演った役の中でダントツのダメ男でしたね。演技をどうこう言う前に以蔵の性格に難ありという感じ。
以蔵が『道具として使われ、あげく捨てられた』ように見えないのは、周りから散々勉強しろって忠告されてたのにしなかったからでしょうね。頭が悪いと言うのを決定事項として、何の努力もしようとしないので『必死に頑張ってたのに虐げられた』って感じがしません(私はそう感じた)。殺人マシーンになるよう強いられてた訳でも無いし。
だから悲劇っぽくするには『以蔵は頑張って賢くなろうとしたのに下手に知恵を付けられると暗殺に迷いが生じると困る』から『勉強しなくても武市先生の言う通りにしておけば良いんだ』って周りから言われてて『人を斬る事しか教えられなかった』とかなら何かもー以蔵ってば可哀相!てなったんじゃないかな。
もしかしたらもうちょいやりようがあった?でも以蔵がやってしまってる事って『馬鹿である事』前提なので演技変えるだけじゃあどうにもならない気がするけど。散々考えたけど考え過ぎてもうよう分からんです。なので演出家のいのうえさんが『新感線ファンの人を驚かせたい』と言っていたけど、実際驚かせる事が出来たのか謎です。パンフレットのインタビューで森田さんが以蔵の事を『小2』と分析してたのは凄く正しいなと思いました。本当に以蔵の思考回路が子供過ぎ。
取り敢えず初見なので大阪公演を見たら何かまた違う事を感じるかもしれません。見逃してる事とかあるかもしれないし。