ビニールの城(8/7公演)

8月7日(日)の回をに見に行きました。2回入れて1回落ちてしまったので1発勝負。もう結構記憶が薄れてきてますが…過去最高に難しいお話でした。理解が難しくて見てる最中に「これはついていけなくなるか…?」と心配もしたけれど、見終わったあと分からないなりに舞台の内容が頭にちゃんと入ってて(残ってて)ああ良かった、良い舞台だったなと思いました。
この日は公演二日目。リピーターも少なく演者もこなれる前。客電が落ちる数分前、客席が水を打ったように静かでただ始まりを待つだけじゃなくどこか緊張感も混ざっていて、勝手に一体感を感じてしまいました。生の舞台は客席も舞台の一部みたいなとこがあって、良い舞台になりそうだと期待も高まりました。
冒頭から繰り広げられる怒濤の詩的な台詞の洪水に溺れないよう付いて行くのに必死だった前半。だけど徐々に見方も分かってきて後半はこの世界に浸る事が出来ました。前述した通り理解は出来なかったんだけど、見る前と見た後では世界が変わって見えたというか劇場を出て歩きながらさっきまでの世界を頭の中でずーっと反芻してて、確実に何かが残った感覚が味わえたのが良かったです。
森田さんは初の腹話術師役という事で大丈夫かしらとちょっと心配してたんですが3種の声色を見事に操ってて驚きました。右端で見てたので口の動きまでは見えなかったのでそっちの技術はよく分からなかったんだけど低い声が森田さんっぽくなくてビックリ。
あと水の演出が大変そうだけど似合ってて、でもずぶ濡れになると途端に可哀想度倍増するのはあの薄っぺらい身体のせいでしょうか。水槽シーンでは本当に入ってて大丈夫かとドキドキしました(泳ぎがあんまり得意じゃなさそうなんで)
水中眼鏡を用意してた時の得意げな笑顔は凄く可愛らしくて何回でも見たいシーンでしたね。あとモモの歌を嬉しそうに聞いて拍手してる時の笑顔も可愛くて普段あんまり見られない表情なので凄く印象的でした。それと歌!まさか森田さんが歌うとは。儚げで優しくてキャラメルボイスで世界観にピッタリでした。
宮沢りえさんは少女のような透き通る舞台用の声を持っていてビックリ。普段の声と違うので登場時顔を隠していた事もあって暫く本人だと分からなかった。荒川良々さんは流石の存在感でちょっとした動きを笑いに変えられるのが凄かった。
結局朝顔とモモはどこまで行っても平行線で交わる事は無かったですね。ラスト、人形を取り戻した途端「あのアパートへ一緒に帰ろう」と誘う朝顔だったけどモモは拒絶。一見ハッピーエンドかと思いきや朝顔が提示したのはあの元の壁一枚隔てた関係へ戻ろうって事で、モモの絶望が凄まじかった。途中モモもそこで妥協しようとしてたけど望んでいたのはビニールの城からの脱出だったんですもんね。
あの瞬間の朝顔はそれまでの朝顔と打って変わって至極真っ当な人間のように見えました。まるでスランプ開けのアスリートみたいな。さっきまでちょっとおかしかっただけって感じで。結局何も変わらなかった朝顔と変わろうともがき苦しむモモ。ただ最後に朝顔が叫んだ名前はそれまで何度も口にし続けたゆうちゃんではなくモモだった事を考えると、頑だった朝顔も何かが少し変わったのかもしれない。